ねぇ先輩、名前をよんで。
すると。
すぐ入り口に誰かが座っていた。
「あの、すみません。
通りたいんですけど……」
私の声にゆっくりと顔をあげたのは
清水くんだった。
「清水くん……」
こんなところに一人でいるなんて、意外だ……。
清水良太(しみずりょうた)くん。
目鼻立ちがすっきりとした顔に
ダークブラウンの髪が特徴的な彼はクラスの人気者だ。
いつも周りにはたくさんの人がいるけれど
ワイワイガヤガヤというよりは、
人よりも落ち着いている人だった。
そんな人がひとりポツリといるなんて、
どうかしたんだろうか。
「お前って……結構話すんだな」
清水くんは私にそんな言葉をかける。
彼とはほとんど話したことがないから、
まさか話しかけられるなんて思わなくてビックリした。