ねぇ先輩、名前をよんで。




そこまで言った時、

彼は声を出して笑った。


「あはは……っ

ゆうちゃんと俺の勝負なのに

俺の方が勝つって普通言う?」


ーー先輩が、笑った。


前みたいな笑顔ではないけれど、

見たことのない顔で先輩が笑っている。


嬉しい。


「ゆうちゃんって本当に不思議な子だよね。

あーもう、久しぶりに笑ったよ」


先輩はお腹を抱えると。


「いいよ、やろうか」


そう言って柔らかく笑った。


「えっ、いいんですか!?

だってそれって授業にちゃんと出るってことですよ」


今まで笑っていた先輩は

今度は真面目な顔をして言う。


「そうだね。

きっと授業に出ないと勝てないね」


「いいんですか?」


「出るよ。

ゆうちゃんがそう言ってくれたから」




< 89 / 250 >

この作品をシェア

pagetop