ねぇ先輩、名前をよんで。
そこまで言った時、
彼は声を出して笑った。
「あはは……っ
ゆうちゃんと俺の勝負なのに
俺の方が勝つって普通言う?」
ーー先輩が、笑った。
前みたいな笑顔ではないけれど、
見たことのない顔で先輩が笑っている。
嬉しい。
「ゆうちゃんって本当に不思議な子だよね。
あーもう、久しぶりに笑ったよ」
先輩はお腹を抱えると。
「いいよ、やろうか」
そう言って柔らかく笑った。
「えっ、いいんですか!?
だってそれって授業にちゃんと出るってことですよ」
今まで笑っていた先輩は
今度は真面目な顔をして言う。
「そうだね。
きっと授業に出ないと勝てないね」
「いいんですか?」
「出るよ。
ゆうちゃんがそう言ってくれたから」