ねぇ先輩、名前をよんで。
あの時、ついてしまった嘘を
嘘だったと言えるチャンスにしたい。
そしたら苦しい自分からも解放されるから。
ふたりで図書室まで足を運ぶと、
教室のドアには【改装中】と書かれた紙が貼られていた。
「使えないみたいですね……」
「そっか」
どうしよう。
じゃあ今日はこれで解散ってことになったら。
少し不安に思いながら、先輩を見ていると
彼は意外なことを言った。
「じゃあさ、俺の家来る?」
「えっ!いいんですか?」
「いいよ、ここから近いし家に誰もいないと思うし」
先輩の家に行けるなんて思いもしなかった。
私は元気にうなずくと、
勉強道具をカバンに入れて校舎を出る。
先輩の家は私とは反対方向の電車で2本目だった。
いつもの帰り道よりも
長く先輩といられることに幸せを感じる。