ねぇ先輩、名前をよんで。
懐かしい。
あの頃の先輩だ……。
そっと手を伸ばそうとしたその時。
ーーガチャ。
お茶とお菓子を持って来た先輩が中に入って来た。
「ごめんね、これくらいしかなくて」
「いいえ、ありがとうございます」
小さな机を持って来て広げると、
先輩はそこに勉強道具を並べる。
私は先輩と向き合うように座った。
シーンと静まり返る部屋でふたりきり。
ドキドキして、先輩の方を意識してしまう。
「これはね、ここをこうして……」
しばらくふたりで勉強をしていると、
先輩は言った。
「ごめんゆうちゃん、
後ろにある参考書取ってもらえる?」
「あ、はい」
私の後ろにある本棚の分厚い参考書。
それを取ろうと、手にとった瞬間。
ぐらり、と本棚が揺れた。
「危ない……!」