ねぇ先輩、名前をよんで。
ドキドキと鳴る心臓がうるさくて、必死にそれに耐える。
「俺は平気だよ」
先輩は自分が起き上がると、
私の手を取り一緒に起こしてくれた。
「ありがとうございます」
いつだって私は緊張するのに、
先輩はそんな素振りすら見せない。
一方的な気持ちを心にしまう。
ふとした瞬間。
現れる"好き"を隠すことにはもう慣れた。
私はそのドキドキを抑えるように
写真立てに視線を移した。
私の視線をたどるように見た先輩。
「ああ、あれね……」
そう言って、小さく話し出す。
「未だに前に進めてないんだ。
本当に笑っちゃうよね」
「これって優さんですか?」
「うん、優だよ」
優さんとの写真。
小さい頃から高校の制服を着ている時まで
本当にずっと一緒にいたんだと分かった。