君の日々に、そっと触れたい。
────それなのに………。
「…李紅……李紅、朝よ」
そう軽く肩をゆする母さんの声で目が覚めた。
いつも以上に瞼が重く、ぐらぐらと視界が回る。
寝起きとは言え、経験と勘ですぐに分かった。今日はあまり体調が良くないらしい。
「……李紅?もしかして、体調悪いの?」
心配そうに眉をひそめて、母さんは俺の顔を覗き込んだ。
小さい頃から俺の闘病生活を1番近くで見てきたから、母さんは俺の不調にはすごく敏感。
「辛いなら今日は学校おやすみする…?」
「大丈夫だよ、眠たいだけ。それより母さん、今日はホスピスの先生と話あるとか言ってなかった?」
「ええ、そうよ。でも李紅が具合悪いなら日にちをずらしても……」
「そんなの先生に悪いよ。それに俺なら大丈夫だから」
そう言って内心慌てて起き上がると、がんがんと前頭部が鈍く痛み、耳鳴りが頭に響く。
それを長めの瞬きでやり過ごすと、不調を悟られまいと足早に洗面所に向かった。
「李紅〜?今日はお父さんも編集部へ行ってて居ないから、李紅ひとりになっちゃうけど」
「うん平気、学校行くし。鍵はポストに入れておくね」
「……そぉう?」
母さんは腑に落ちない様な顔をしながらも、なんとか誤魔化されてくれたみたいだった。
───普段ならこんな風に自分の不調をひた隠しになんてしたりしない。
だけど今日は、どうしても学校へ行かないと。委員会を今井に丸投げにはできないし、せっかく今井と、皆と仲良くなるチャンスなんだから………。
実際、いつもならこんな頭痛は痛み止めを飲めばある程度治まる。