君の日々に、そっと触れたい。
結論から言うと、その判断は間違いだった。
洗面所の床で蹲る俺は、完全にそこから動けなくなっていた。
母さんが家を出たのを確認して気が抜けたのか、頭痛は収まる兆しを見せずに酷くなるばかり。
食欲がないからと空っぽの胃に鎮痛剤を押し込んだのも良くなかった。せっかく飲んだ薬も先程戻してしまった。
状況はかなり悪い。
正直ここまで酷くなるとは思わなかった。
普段から健康には気を遣ってるつもりだし、昨日だって別に無茶なことはしてない。
……それだけ、期限が迫ってるってことだろうか。
「……………っ…」
変なことを考えてる暇があるなら、この状況を打開する方法を考えよう。
取り敢えず学校には行けない。這ってでも行くつもりだったが、一歩も動けないこの状態では無理だ。
だからあとは今井に連絡をして、委員会に出られないことを謝って。冷や汗でへばりついた服を着替え、2階の自室でおとなしく寝ていればいい。
たったそれだけの事なのに、もう携帯を手に取るのも億劫だ。
俺はついにずるずると床に横たわってしまった。
脳から血液がさっと抜けていくような妙な感覚と比例して、遠のく意識。本格的に朦朧として来た。こんな所で失神なんてしたらまずいことは分かってるのに。
抗うことも出来ずに闇に落ちていく意識の中、遠く携帯の着信音が聴こえた。