君の日々に、そっと触れたい。
そんな中、さっきアイツに電話を掛けてみると言っていた女子が、慌てたように声を上げた。
「ねぇ、繋がったよ……!」
「よかった……!」
その女子の言葉に安堵の表情を浮かべる先生。いやだから、大袈裟じゃね?
「それで、古城くんは今何処に居るんです?」
「それが………さっきからあんまり話が噛み合わなくて、なんか取り敢えず今井に代わって欲しいって………」
「俺っ!?」
突然の指名に驚きしかない。何で、俺?
何が何だか分からないまま、女子たちに促されるままに取り敢えず電話を代わった。
「もしもしー……俺だけど」
『………………いまい…?』
スピーカーの向こうから聴こえた声は、あまりに虚ろで掠れていて、少し動揺した。
「お前…………どうした?なんか辛そうだけど…。てか、なんで俺に代わったんだよ」
『……委員会……出れないって言わなきゃと思って………ごめんすぐ連絡しようとしたんだけど……ちょっと…動けなくて…』
「動けないって……そんなに体調悪いのか…?お前今どこにいるんだよ」
『家……学校も休む、って先生に言っ……………っ!!』
言葉の途中で突然息を詰まらせたアイツ。声を殺した小さな呻き声が聴こえ、なんだかよく分からないが言い表しようのない焦りを感じた。
「お、おい!お前…どうしたんだよ!?」
そう大声で尋ねても、返事は一向に返ってこない。
無性に嫌な予感がした。
「…………くそっ!」
乱暴に電話を切ると、女子に携帯を返すことも忘れて走り出した。
背中に焦る担任とクラスメイトの声を受けながら、振り返らずに教室を飛び出した。