君の日々に、そっと触れたい。
「────薬とかねーのか?」
「……………戻しちゃった」
それで洗面所なんかに居たのか。
「…今は?吐き気とかはないのか?」
「気持ち悪い、けど……、もう起きれないから大丈夫」
───いやいや、それのどこが大丈夫なんだ。
「全然動けそうにないか?」
「…………ごめん」
「責めてねぇよ。取り敢えず毛布とか探して持ってくるから待ってろ」
体格差的には問題ないから俺が寝室に運んでも良かったが、おそらく今は極力身体を揺らされたはくないだろう。
リビングのソファーに畳まれていた毛布を手に洗面所に戻ると、アイツはさっきよりも酷い顔色で頭を抱えていた。
「……っおい!大丈夫か?!」
そう慌てて尋ねれば、アイツは静かに頷いた。
そしてまた、柔らかく微笑んでみせた。
───……どうして。
どうしてコイツは、こんな時に。
こんな顔をして笑うのだろう。
そんな紙のような顔色で、額に冷や汗を滲ませて、それでもなぜそんな風に笑えるんだ。
「…………何で笑ってんだよ」
「………だって、今………。今井の方が…幽霊みたいな顔をしてる…」
───俺?俺の為?
こんな状況に戸惑って青い顔をして慌てふためくことしか出来ない俺を、安心させるために?
そんなことのために、コイツは苦痛を噛み殺して笑うのか…?
コイツは、そうゆうことが出来るやつなんだ。自分が辛くても、人の為に平然と笑う。
…………だとしたら、俺は?
コイツは俺の為に笑うのに、俺はコイツに何もしてやれないのか?
今、本当に辛いのは、コイツの方なのに。