君の日々に、そっと触れたい。
「な、なんか俺に出来ることねーのかよ」
我ながらぶっきらぼうな訊き方だったとは思う。
だけど他に気の利いた事なんて言えないし、とにかく今は何でもいいからコイツの役に立ちたかった。
ソイツは一瞬だけ驚いたように目を丸くしたけれど、すぐにあの笑顔を浮かべた。
「…………ここに居て」
そう言って、目を細めて微笑む。
どういう訳か、俺にはコイツが泣きそうな顔をしているように思えた。
このままではどこかに消えてしまうのではないかと錯覚するような儚い笑顔に、俺は思わずその手を握った。
「…………今井、あのね」
弱い力でぎゅっと俺の手を握り返しながら、呟いた。
「俺ね、今井と友達になりたかったんだ」
思ってもいない言葉に、思わず目を見開く。
「………だから今日、どうしても委員会に出たかった。でも今日に限ってこんな状態で………」
でも、とソイツは続ける。
「でもさ、今井は来てくれた……」
そんなことが堪らなく嬉しいのだと言うように、ソイツはまた笑う。
「お前………思ってたより感情豊かなんだな」
率直な感想だった。
教室に居る時のコイツは、なんだかとっつきにくい。でも今目の前に居るコイツは、よく喋ってよく笑う。
「酷いなぁ……」
「だって、学校ではもっとすましてんじゃねぇか。いつも独りだし」
「苦手なんだ、大人数。慣れてないからかな、なんか疲れる…」
慣れてないって………ああ、そう言えばコイツ、小学校も休みがちだったって言ってたな。
「俺はてっきり、独りが好きなんだと思ってたぜ」
「…………独りがいいなんて、一度も思ったことないよ」
その言葉を証明するかのように、ソイツは握った手に力を込めてきた。
触れ合う手の平が、僅かに熱い。