君の日々に、そっと触れたい。
「ごめん、それでも傍に居て」
翌日、李紅は結局 海辺には来れなくて、私は今日も李紅の家に足を運んだ。
「あら、いらっしゃい桜ちゃん!きょうも来てくれたのね」
今日は夕実ちゃんに会わなかったから、一人での訪問。少し緊張したけれど、李紅のお母さんの優しい笑顔ですぐに和らいだ。
「李紅ね、今リビングでテレビ見てるのよ」
「え、起きてて大丈夫なんですか?」
「もうだいぶ良くなってきたのよ。暇すぎて死にそうだぁって喚いてたくらいだもの」
「はは………」
本当に一年後に死んじゃう人が言うと、ちょっと洒落にならないような……。
思わず苦笑いをする私に対して、李紅のお母さんは特に何も気にしてないらしく、キョトンとした表情を浮かべている。
李紅のマイペースは、お母さん似だろうか。
リビングに案内されると、毛布にくるまった状態でソファーに座った李紅が、真剣な顔をしてテレビを見ていた。
「李紅、桜ちゃん来てくれたのよ」
相当見入っていたみたいで、お母さんに声を掛けられてようやく私の存在に気づいたようだ。
「桜っ!」
私の姿を見るなり、勢い良く立ち上がる李紅は、まるで幼い子供のように喜んでいた。思わず頬が赤くなる。
昨日、自覚した。私は李紅が好きなんだと。
だからと言って二人の関係としては、何が変わったわけではないのだけれど。
「李紅、元気そうでよかった」
「うん元気。学校もちょっとまだフラフラするから休んだだけなんだ。それに海辺に行かなくても桜が会いに来てくれるから」
そう嬉しそうにはにかむ李紅。
昨日の私の言葉は、なぜか相当嬉しかったらしい。