君の日々に、そっと触れたい。
「ここやで」
夕実ちゃんが案内してくれた李紅の病室は、どうやら四人部屋のようだ。
「ほらりっちゃん、桜ちゃん来てくれはったよ」
病室の扉を引き、夕実ちゃんが大きめの声でそう言うと、一番奥のベッドのカーテンが勢いよく開いた。
「李紅!」
そこからひょっこり顔を出した李紅は、心底嬉しそうに目を細めて、私の名前を呼んだ。
「待ってた」
そう短く告げ、広げた両手にそっと優しく飛び込んだ。
抱きとめてくれた腕には点滴の管が繋がっていて、お腹の横あたりから伸びている太い管は、ベッドの横にぶら下がる血液の入ったパックに繋がっていた。
李紅は何度もうけた手術だと言っていたけれど、こんな風に見たこともない医療機器を見ていると、改めて李紅の事情の重さを思い知らされる。
そんな私の目線に気付いたのか、李紅は苦笑いをする。
「これも夜には外れるよ。元気すぎて退屈してたんだ」
「うん、テレビばっか観てるって夕実ちゃん言ってたもん」
「暇すぎて子供向けアニメ見てたで」
「ちょ…!バラすなよゆうちゃん!」
「あははっ!」
みるみるうちに赤くなる李紅の顔。
それがますます小さな子供みたいで、すごく可笑しくて声に出して笑う。
隣のベッドのおじいさんも、クスクスと笑っていて、李紅はますます赤くなる。
李紅の作り出す空気は、いつも軽くて穏やかだ。