君の日々に、そっと触れたい。
自分があまりに酷い人に思えて、思わず俯いたその時、一人の小学校6年生くらいの女の子が、突然に泣きだした。
「ゆ、ゆり?どうした?!」
坊主頭くんも訳が分からずに、戸惑いながら彼女の背を撫でる。すると彼女は息も絶え絶えに言った。
「…ほんとは………あたし……たまたま看護師さんの話聞いちゃって………、看護師さんに、皆には黙ってなさいって言われたんだけど………」
「何を?!」
「りっちゃんが…………りっちゃんが死んじゃうかもしれないって…………」
見開いた目と同時に、背中が凍りついた。
「何……言ってんだよ。手術は無事終わったって聞いたぞ!?…ど…どうゆうことだか、詳しく話せ!」
動揺しながらも、坊主頭くんはなんとか言葉を紡いで、胸ぐらを掴まんばかりに彼女に詰め寄った。
「そ、そうなんだけど……その後、高い熱出してずっと吐いて、信じられないくらい頭が痛いって言って……慌てて調べたら脳みそにバイ菌が入ってて、今晩がヤマだって………!」
───今夜が………ヤマ……?
そんな言葉を、ドラマとか映画とかで何度か聞いたことがある。
だけどこれは………現実や。
…………あれで、最期なん……?
彼を、深く傷つけて………それきり?
「そんなん……絶対いやや…!」
気づいたら走り出しとった。
慌てた様子の子供たちの声を背に受け、彼の元へ。
病室の場所なんて勿論知らん。だけどガラス張りの病室が連なる中、一際騒がしく人の多い病室を見つけ、そこに彼がいると確信した。