君の日々に、そっと触れたい。
ふと、視線を感じてベッドの上の彼に視線を戻すと、彼は蒼い瞳を薄く開いてこっちを見とった。
「李紅くん……」
私の姿を見つけ、何か言いたそうに唇を動かすのが見えるけど、ガラス越しでは何も聴こえへん。そもそも、ちゃんと声が出てるかも分からん。
ただ、性懲りも無くへにゃりと笑う。
なんて嘘くさい笑顔なんや、と率直に思ったけれど、訳もわからんまま涙だけが溢れた。
……知らんかった。
あんな嘘くさい笑顔でも、こんな時に見せてくれたら、こんなにも安心するんや…。
だから彼は、いつも笑って………。
それから、どうしたんやっけ。
とにかくウチはアホみたいにわんわん泣いて、泣きたいのはこっちだよとでも言いたげに、彼はくすりと笑ってまた意識を失った。
そしたら看護師さんがきて、勝手に病棟を出たことをこっぴどく叱られ、連れ戻された。
その晩は一睡もできなかったけど、翌日の昼にはまた子供たちの盗み聞きにより、李紅くんが来週には一般の病室に帰ってくると聞いた。
どうやら、死んじゃわないでいられたようだった。