君の日々に、そっと触れたい。

「幸せすぎて怖いんだ」

【桜 side】



「やっぱり………夕実ちゃんも好きだったんだね………李紅のこと」


夕実ちゃんと出会った頃の李紅の話を聞いて、第一声はそんな言葉だった。

夕実は否定せずに、静かに微笑んだ。


「でも、どうにもしんよ。桜ちゃんがりっちゃんのこと好きなんは分かっとるし。りっちゃんも桜ちゃんのこと、ほんまに大切に思っとるのもわかっとる。ウチは結局お墓参りにも、連れて行ってやれんかったし…」


だからそれでええ、と夕実ちゃんは満足そうに言った。


「夕実ちゃん………」

「りっちゃんのこと、よろしゅうな。今のりっちゃんの笑顔があの頃みたいに嘘くさくないのは、桜ちゃんのおかげやってウチ思うとるんやから」

「そんなこと………」

李紅の笑顔に救われたのは私の方だ。きっと夕実ちゃんは私を買い被りすぎてるんだと思う。

……でも、

でももしも本当に、私が李紅の笑顔を本物に変えているのだとしたら、それより嬉しいことなんてない。


「よろしゅうな、桜ちゃん」

「………うん。頑張るよ、私」


私に何が出来るかなんて分からないけれど、李紅の笑顔の理由になりたい、という気持ちに揺らぎはない。

だから、頑張ろう。最期まで。


< 69 / 115 >

この作品をシェア

pagetop