君の日々に、そっと触れたい。
【李紅side】


桜に夏祭りに誘われた。

嬉しい。けど、実は夏祭りなんて行ったことない。

それを昼休みにいつものメンバーに言ったら、太陽は牛乳を吹き出した。


「ちょ、太陽汚いよ」

「いやいやいや、だってお前!初めてって、ええ!?」

「仕方ないだろ、李紅には色々事情があるんだから」

「そうだぞ、ほらタオル」


そんな大袈裟な反応をしたのは太陽だけで、賢太郎と浩平には特に驚く様子はない。

このメンバーで行動するようになってもうしばらく経つ。元々冷静で落ち着きのある浩平と、面倒みの良い賢太郎は、俺の事情にもうだいぶ慣れてきたらしい。


膝のリハビリが終わって学校に来た後も、賢太郎は何も言わなくても率先して色々と手を貸してくれた。おかげで俺は特に無理もなく、体調を崩すこともなく楽しい学校生活を送れている。


「馬鹿にしてるけどな太陽、お前も女の子とは夏祭りに行ったことないだろ」

「それを言うな浩平…」

「あはは」

「笑うな李紅!」


前に賢太郎に言ったら、大袈裟だと軽く頬を叩かれたけど、今も変わらず思う。

こんな風に学校の昼休みに、友だちと笑う日が来るなんて、夢みたいだ。

こんな日が、できるだけ長く…続けばいいと心から思う。


「そうだ。来週の隣町の花火大会は、このメンバーで行かね?」

そう言い出したの浩平。その提案に、俺達は一斉に賛成した。


本当に何もかもが嬉しくて、怖いくらいだ。




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