君の日々に、そっと触れたい。
「外に居たの、チビたち?」
「うん。李紅に会いたがってた」
「そっかぁ……、なんか悪いことしたな」
「明日また来るって。夕実ちゃんは?」
「ああ来てたけど、俺寝ちゃってから帰ったみたい。さっきラインきた」
「そっか、お母さんは?」
「先生とお話中」
そこまで一気に話すと、李紅は疲れたように一息ついた。
まだあんまり顔色は良くない。
「……桜、昨日はごめん」
「え?」
「なんかちょっと……気が動転してた」
「………ううん」
だって全部全部、本音でしょ?
優しすぎる李紅は、気が動転でもしないと本音を言えない、不器用な人だから。
不意に扉からノックの音が響いて、李紅が短く返事をすると、食事をトレーを持った年配の看護師さんが入ってきた。
「李紅くん、お昼だよ。朝も食べれてないから、なるべく食べてね」
「はーい………」
間延びした返事と共に、李紅はあからさまに顔を顰めた。食欲が無いのだろうか。
看護師さんが病室を出ていった後も一向に食べ始める様子のない李紅。
「大丈夫?ベッド起こそっか」
「んー…、食べなきゃダメ?」
「ダメだよ!」
「……だよね。言ってみただけだよ。ベッド起こして」
…………うそ。本気だったくせに。