遠距離恋愛はじめます
3
「あの~肩じゃ疲れません?ひ、ざ…で寝ますか?」
もごもごと呟くように言った言葉はしっかり聞こえていた様で、肩から創の頭が離れるのと同時に視線を感じた。
それなのに、創は一言も発せずにただただ茉子を凝視している。
沈黙と視線が痛いよっ!
何言ってんのコイツって思われてるよね…でも、恥ずかしくて創さんの方向けない!!
お願いです。そっちからお断りしてください!
脳内で土下座しながらそうお願いするも、創が何か言い出す雰囲気ではない。
もう少しこのままでいるべきか…しかし、沈黙にも視線にももう耐えられないと話しかけようとした時、創がボソッと言った言葉が耳に届いた。
「女子大生の膝枕か……エロっ」
「な!もうなんでそういう風に言うんですか!」
一気に耳まで真っ赤にしながら茉子が叫んだのを聞いて、自分が何を言ったのか理解した創がバツの悪そうな顔をする。
「ごめんごめん、でも遠慮しとく」
「あ、そうですよね…すみません。小娘が出過ぎた真似を…」
真っ赤になった頬を両手で抑えていた茉子は、そのまま深く頭を下げた。
両サイドから流れてきたセミロングの髪が顔を隠したが、恥ずかしさからではなく何故か泣きそうな今の茉子にはちょうど良かったのかもしれない。
―――あれ?なんであたしちょっとショック受けてんだろう…?
「違う違う、そうじゃなくて。嬉しいし茉子ちゃんの太ももも魅力的なんだけど、さすがにねー」
「ん?」
その言葉に何を言っているんだろう?と創の視線を辿っていき自分の膝に辿り着いた瞬間、一度引いた熱がまた集まってくるのを感じた。
「わわわ忘れてください!!」
ダークグリーンのロングカーデにトップスはリブスカラップの白。
デニムのショートパンツからは生足にスニーカー。
そう、生足。いつもはタイツを履いているのだが、ここ最近気温が上がってきて暑いからと今日は履いてこなかった事をすっかり忘れていたのだ。
「あ、でも次はお願いするから」
「か、勘弁してください…」
今さら無駄だと分かっていてもロングカーデの裾を引っ張り足を隠している姿を見つつ、物凄く良い笑顔でそう言ってきた創に茉子の心臓がギュッと締め付けられる感覚になる。
その笑顔は反則だから…っ!!
「そうだ、ちょっと付き合ってほしいんだけど時間大丈夫?」
「連絡さえすれば…って、どこにですか?」
「車、向こうの運動公園側だからちょっと歩くんだけど行こう」
「え?」
そう言って創は茉子の荷物を持つと駐車場へと歩き出した。
人質ならぬモノ質を取られた茉子は追いかけるしかない。
「ちょ、待って創さん!それパソコンで重いんで自分で持ちますから!」