遠距離恋愛はじめます
4
「はぁはぁ…」
階段を駆け上がって辺りを見渡すが、男性は見当たらない。
別のホームに行ったのか、それとも改札へ向かったのかも分からない茉子は暫し呆然としてしまう。
どうしよう、どっち?
ああ〜でも電車の時間が…。
これ逃したらまた1時間待たないとなのに!
……よし、決めた。あの人には悪いけど改札出て見つからなかったら落し物センターに届けよう。
さすがに鍵だし連絡するでしょ、うん。
そうと決まれば急ごうと駆け足で改札へ向かった茉子だったが、チラッと視界に入った新幹線改札に何気なく顔を向けてみる。
「あ」
そこには今まさに探していた男性が、切符を買っていた。
うそ、やだ、いた!
ああ〜!!待って!そっちに行かれたら追いかけられないからっっ!!!
「あのっ!すみません!!」
近付きながら男性に向かって声をかけるが、自分だと思っていないのか全く振り向いてくれない。
「すみません、待ってください!えっと…そ、そこのキャスケットの男性!!」
切羽詰まって叫んだ茉子の声がフロア全体に響き渡ると、ガヤガヤしていた空気が一瞬シーンとしたような空気が漂った。
「なに?」
さすがに自分だと気付いた男性が振り返るが、不機嫌を隠しもせず睨んでくる。
大声で叫んでしまったのは申し訳ないが、そんなに睨まなくてもいいじゃない!と茉子はムッとしながら手に持っていたキーケースを差し出した。
「呼び止めてしまってすみません。あの、これ電車の中に落ちていたんですけど貴方のですか?」
男性は視線を差し出されたキーケースから茉子へ向けると、とんでもないセリフを言い放った。
「逆ナン?」
「はぁ〜!?しませんからそんなこと!貴方のじゃないなら係の人に渡してきます」
「ああ、待って。俺のだよ」
「…本当に貴方のなんですか?」
「もちろん。だってあんな大声で呼び止められたら意地悪したくなるじゃん?」
「それは…すみません」
時間帯的に人通りは少なかったとはいえ、叫んでしまった事により注目を浴びてしまったのは事実だと、キーケースを男性に渡しながら茉子は頭を下げた。
「では、お渡ししたので私はこれで」
スマホで時間を確認すると乗る予定だった22時台の電車はあと2分で出発だ。
走れば間に合わなくもないのだが、茉子はホームではなく改札へと歩き出した。
どうせタクシーで帰らないとだし、もうパンプスで走りたくない。
お腹も減ったし、何か食べながら時間潰そうっと。
何件かお店を思い浮かべていると、グイッと手を後ろに引っ張られた。
「っ、きゃ!」
なに!?と振り返れば別れたはずの男性が茉子の手首を掴んでいる。
「ね、終電でしょ?それとも迎え来てくれんの?」
「え…?」
一瞬、何を言われたのか理解出来ず首を傾げてしまった。
「ほぼ無音の待合室で電話すれば聞きたくなくても聞こえるから。ま、そっちもだろうけど」
「あ、いや…」
自分の会話は別に聞かれようが構わないが、男性の言ってる“そっちも”とはあの修羅場っぽい事を言ってるんだと分かり茉子は返答に困ってしまう。
「で、どっち?」
「言う必要ないと思うんですけど」
「じゃ言わなくてもいいや。どこ行く?」
「…えーと、話聞いてます?」
「取り敢えずここ出るか」
「ちょっと!」
会話にならない上に、手を振り解こうにも全く歯が立たず茉子は手首を掴まれたまま駅ビルに続く改札へと連行されるはめになった。
階段を駆け上がって辺りを見渡すが、男性は見当たらない。
別のホームに行ったのか、それとも改札へ向かったのかも分からない茉子は暫し呆然としてしまう。
どうしよう、どっち?
ああ〜でも電車の時間が…。
これ逃したらまた1時間待たないとなのに!
……よし、決めた。あの人には悪いけど改札出て見つからなかったら落し物センターに届けよう。
さすがに鍵だし連絡するでしょ、うん。
そうと決まれば急ごうと駆け足で改札へ向かった茉子だったが、チラッと視界に入った新幹線改札に何気なく顔を向けてみる。
「あ」
そこには今まさに探していた男性が、切符を買っていた。
うそ、やだ、いた!
ああ〜!!待って!そっちに行かれたら追いかけられないからっっ!!!
「あのっ!すみません!!」
近付きながら男性に向かって声をかけるが、自分だと思っていないのか全く振り向いてくれない。
「すみません、待ってください!えっと…そ、そこのキャスケットの男性!!」
切羽詰まって叫んだ茉子の声がフロア全体に響き渡ると、ガヤガヤしていた空気が一瞬シーンとしたような空気が漂った。
「なに?」
さすがに自分だと気付いた男性が振り返るが、不機嫌を隠しもせず睨んでくる。
大声で叫んでしまったのは申し訳ないが、そんなに睨まなくてもいいじゃない!と茉子はムッとしながら手に持っていたキーケースを差し出した。
「呼び止めてしまってすみません。あの、これ電車の中に落ちていたんですけど貴方のですか?」
男性は視線を差し出されたキーケースから茉子へ向けると、とんでもないセリフを言い放った。
「逆ナン?」
「はぁ〜!?しませんからそんなこと!貴方のじゃないなら係の人に渡してきます」
「ああ、待って。俺のだよ」
「…本当に貴方のなんですか?」
「もちろん。だってあんな大声で呼び止められたら意地悪したくなるじゃん?」
「それは…すみません」
時間帯的に人通りは少なかったとはいえ、叫んでしまった事により注目を浴びてしまったのは事実だと、キーケースを男性に渡しながら茉子は頭を下げた。
「では、お渡ししたので私はこれで」
スマホで時間を確認すると乗る予定だった22時台の電車はあと2分で出発だ。
走れば間に合わなくもないのだが、茉子はホームではなく改札へと歩き出した。
どうせタクシーで帰らないとだし、もうパンプスで走りたくない。
お腹も減ったし、何か食べながら時間潰そうっと。
何件かお店を思い浮かべていると、グイッと手を後ろに引っ張られた。
「っ、きゃ!」
なに!?と振り返れば別れたはずの男性が茉子の手首を掴んでいる。
「ね、終電でしょ?それとも迎え来てくれんの?」
「え…?」
一瞬、何を言われたのか理解出来ず首を傾げてしまった。
「ほぼ無音の待合室で電話すれば聞きたくなくても聞こえるから。ま、そっちもだろうけど」
「あ、いや…」
自分の会話は別に聞かれようが構わないが、男性の言ってる“そっちも”とはあの修羅場っぽい事を言ってるんだと分かり茉子は返答に困ってしまう。
「で、どっち?」
「言う必要ないと思うんですけど」
「じゃ言わなくてもいいや。どこ行く?」
「…えーと、話聞いてます?」
「取り敢えずここ出るか」
「ちょっと!」
会話にならない上に、手を振り解こうにも全く歯が立たず茉子は手首を掴まれたまま駅ビルに続く改札へと連行されるはめになった。