遠距離恋愛はじめます

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カフェを出て人通りの少ないところに急いで移動すると、もう一度着信画面に出ている創の名前を確認し通話ボタンを押した。

「もしもし」

『おはよ。いま大丈夫?』

「はい、おはようございます。大丈夫ですけど電話なんてどうしたんですか?」

あの日以来の創の声に緊張しながらも、タロジロに何かあったのかと心配したのだが創のトーンは至って普通だ。

『んー茉子ちゃんさ、今日学校何時まで?』

「今日はもう講義無いですけど」

『バイトは?』

「そっちも無いのでレポートやろうかと…ってなんでですか?」

『んー、また連絡する』

「え?え??」

『あ、学校ってさくら公園の近くであってる?』

「そうですけど…」

『おーけーおーけー。取り敢えず、レポートいっぱい頑張って』

それだけ言って創は電話を切ってしまった。
通話の終わったスマホを見ながら茉子は首をかしげるしかない。

「なんなの?」

カフェに疑問符だらけの顔で戻って来た茉子を見て朱音が不思議そうに聞いてきた。

「なんかあったの?」

「いや、謎の電話が」

「謎ってどんな電話よ?」

「はじ……めてルイさんから電話来たんだけど」

創と言いそうになり茉子は慌てて当初決めた偽名(創が飼っているハムスターの名前だが)を言うと、朱音口角がみみるみる上がっていく。

「ちょっとちょっと~!なんだって!?」

「バイトはあるのかとか、学校はさくら公園の近くかとか」

「それ、デートの誘いじゃん!やっぱ脈ありなんだって!」

興奮気味にそう言ってくる朱音と対照的に茉子は冷静だ。

「デートって…だいたい相手は東京だよ?」

「メル彼が車持ってんなら3時間ちょいで来れるじゃん。他にはなんて?」

「…また連絡するってのと、レポートいっぱい頑張ってって」

「はい、デート決定~!レポートやって俺を待ってろって事でしょ」

「え、あれ?もしかして連絡来るまであたし帰れない系?」

「そこかよ!!」

茉子の的外れな返答を聞いて朱音が大げさにテーブルに突っ伏す。

「だって、レポートもそんなに時間かからないし」

「アンタの乙女な部分はどこに行っちゃったのよぉ~」

「…旅に出てんじゃない?」

「あーなんであたし今日バイトなんだろ…気になって仕方ないのにぃ~!いい、帰っちゃダメだからね!ちゃんと連絡待っててよ!そして明日報告!!」

そう言うと、朱音は立ち上がり茉子を見下ろすと腰に手を当てた。

「返事!!」

「はーい」

「よろしい。じゃ、バイト行くわ」

「いってらっしゃーい」

行きたくないと物語っている朱音の背中に手を振り、茉子はレポート作成の準備を始めた。
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