御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
夜遅く、奏は帽子を目深にかぶりマスクをつけ、誰にも見つからないようにこっそりと非常階段から外に出た。

けれど、待ち伏せしていた記者にあっさりと見つかってしまう。

止めてあった数台の車のドアが開き、カメラを構えた記者たちが走り寄ってくる。

奏は近くに止まっていたタクシーに飛び乗った。

「すぐに出してください!」

とにかく走ってもらい、数百メートル走行するうちに、あとを追ってきた数台の車もみえなくなった。

奏はほっと息をつき、タクシーの運転手に行き先を告げる。

向かうは美影に指定されたホテルの一室。

辿り着いた時には、すでに美影と小田桐が待っていて、無事に到着した奏の姿を見て安堵の表情を浮かべた。

「来てくれて本当にありがとう」

ホテルの部屋に入るなり、美影は奏をぎゅっと抱きしめて迎えてくれた。

奏にとっては、ここまでやってくるだけで脱獄さながらの恐怖と緊張を味わった。
暑くもないのに汗をびっしりとかいたし、今すぐそこにあるベッドに倒れ込んでしまいたいくらい疲弊している。

そんな緊張で強張った体をほぐすかのように、美影がそっと背中を撫でてくれた。
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