御曹司と契約結婚～俺様プレジデントの溺愛に逆らえません～

一晩中、何度も入念にリハーサルを重ね、セリフは完璧に頭に入っている。

とはいえ、奏にとって大勢の前――しかもカメラの前で口を開くのは初めての経験だ、ただでさえ人見知りで口下手なのに、緊張と恐怖で気を失ってしまいそうだ。

さらに、記者会見の最後に用意された質疑応答の時間では、記者からどんな質問が飛んでくるのか予想もつかない。
その場で機転をきかせ、うまいこと返事をしなければならない。

「大丈夫。私が隣でフォローするから」

緊張で震える奏の手を、美影がそっとさする。

「自信を持って。あなたの素直な言葉は必ずみんなの心に届く。現にあなたは、鷹凪の心を動かしたじゃない」

見上げた先には優しく微笑む美影がいた。

その奥の小田桐は、すでにテレビに出るときの顔に切り替えていて、唇を厳しく引き結んでいた。

「頼んだぞ、奏さん。今までメディアに顔を出さなかったあなたの発言は、それだけでも説得力のあるものになる。話題性でマイナスの印象も逸らせる」

「ちょっと、プレッシャーかけてどうするのよ」

「ああ……悪い。まぁなるようになるさ」

ネクタイを締め直しながら、普段とはちょっと違うニヒルな笑みを浮かべる。