御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
会見は順調に進んでいた。
記者からの質問も予想の範囲内に留まり、奏を混乱させるような番狂わせも起きていない。

「以前、美影夫人と吉良総理の熱愛報道がありましたよね」

「それについては――」

小田桐の目線に答え、美影が自らマイクに顔を近づける。

「同じ政治に携わる立場として、意見を交わす友人でした。それ以上の関係はありません」

もちろん、この質問も予測済みで、美影は用意された答えを読み上げているだけだ。
嘘偽りなど微塵も感じさせない態度で美影は答える。

次の質問に移り、記者たちが挙手をする。

そろそろ終了時刻のはずだ。次の質問で最後だろう、これを切り抜ければ会見が成功に終わる。

そんなことを考えてそわそわとする奏。
けれど、次の質問権を得た記者の視線がまっすぐ奏へと伸び、バチリと目が合った。

見覚えのある顔――昨日、家に押しかけてきたあの記者だった。

「奏夫人に質問なのですが――」

小田桐と美影の表情にもわずかに緊張が走る。
奏はそっとマイクに近づき、恐る恐る「……はい」と答えた。

「今まで夫人としての務めを放棄し、吉良総理の影に隠れ続けてきたのはなぜですか。あなたが総理よりも優先していた仕事というのは、そこまで価値のあるものだったんですか」
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