御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
美影がハッとしたように顔をあげる。

彼女の方が泣きそうな顔をしていた。吊し上げにあう奏を助けたい、けれどなにもできない、そんな無力さを悔いるように。

そんな彼女に、大丈夫だと伝えたくて、奏は不器用にぎくしゃくと頷いた。

「けれど、鷹凪さんは言ってくれました。ただ、愛してくれればいいと。政治も、仕事も、なにも求めないから、ただ愛し愛されるだけの関係でいいって」

「夫人は、本当にそれでいいと思っているのですか?」

「いえ……だから今、この場に立ちました。夫のために、やらなければならないことがあると思って」

その時だった。

「奏!!」

奏たちの座る壇上の脇にあった扉が突然大きな音を立てて開いて、そこから飛び出してきたのは――

「鷹凪!? どうして!?」

乱入してきた内閣総理大臣の姿に、小田桐は驚きの声を上げ、記者たちは激しいフラッシュをたいた。

鷹凪は奏に駆け寄りその腕を掴むと、強引に立ち上がらせ自分の影に隠した。
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