御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「奏、もういい。下がっていろ」

「待って、まだ質問が――」

「いいんだ、お前はこんなことしなくて」

苛立った口調でそう言い聞かせると、鷹凪は乱暴に奏の手を引いてその場から立ち去ろうとした。

「待て鷹凪」

静止したのは小田桐だった。

「今立ち去れば、彼女は非難される。最後まで答えさせた方がいい」

「ふざけるな! 彼女をこんな目に合わせてどういうつもりだ!」

会見場に怒声が響き渡る。

テレビの前で初めて怒りをあらわにした総理の姿に、記者たちは一心にカメラをかまえた。

「今まで俺がどれだけ、妻を大切に守ってきたかわかるか! それをお前は、勝手にこんなところに連れ出して人目に晒して非難を浴びせて!」

小田桐の襟元に掴みかかろうとする鷹凪を慌てて奏は引き留める。

「待ってください! 私が自分からここに来たんです! 小田桐さんのせいじゃありません」

鷹凪の胸にすがりつく奏。小田桐がそのうしろから冷静に鷹凪を諭す。

「奏さんの意思も尊重したらどうだ。いつまでもお前のお荷物でありたくないと、決死の覚悟でこの場に立ったんだ」

「俺は奏をこんな形で利用するために結婚したわけじゃない!」

鷹凪は奏をぎゅっと抱きしめて掠れた声を絞り出した。
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