御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
【番外編】君を見初めたわけ
「ここは強引に押し切った方が効果的だ」

鷹凪の自信に満ちあふれた声が事務所内に響き渡った。

反論したのは、凛とした声の女性。

「これじゃあ反感を買う恐れがあるわ。逆効果よ」

シンプルなブラックのスーツに身を包んだ美影が、声を張り上げた。

応える鷹凪も、じわじわと声をボリュームアップさせていく。

「国民は救いのない政治に失望している。藁にも縋る思いで指導者を求めているんだ。今、望まれているのは、国民に道筋を示すアジテーターなんだよ」

「扇動者ですって!? 独裁政権でも作るつもり!? 冗談言わないで。お父様の『国民に寄り添う政治』を忘れたの!?」

「そうじゃない。俺は戦略としての話をしているんだ」

徐々に鷹凪の声が苛立ってきた。

なぜこんな言い争いをしなければならない? 
鷹凪はうんざりしていた。

ふたりが真剣に向き合うほどに、お互いの主張は強くなり、言い争いは増える。
いわばふたりの誠実さの表れともいえる。

だが、そもそも鷹凪の信念と美影の譲れない部分がかみ合っていない。
それは政治家と秘書という間柄においては致命的なものであり――
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