御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
(あっ、もうこんな時間!)

テレビを消して、奏は家を出る準備を整える。

朝から暗雲が立ち込めていた空は、とうとう今さっき、大粒の雨を降らし始めた。

奏は玄関でお気に入りのブラウンの傘を手に取り、母とふたり暮らしのこのアパートを出た。

これから奏は、その憧れの人物に会いに行く。
とはいえ、向こうは奏のことを知らないし、せいぜいうしろ姿を陰ながら見守ることしかできないのだけれど。

(それでも、少しでも力になれたら嬉しい……)

新たな一日に期待して、奏は今日という一歩を踏み出した。

この先に待ち受ける甘く情熱的な出来事を、まだ彼女は知らない。
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