御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
ぎくりとして奏はうつむく。
不条理なクレームをギャンギャンとがなり立てる顧客。接待に行けばNOと言えないのをいいことに、ホテルに連れ込まれそうになったこともある。

人間は好きだ。けれど、仕事で関わる人間は嫌い。

その結果が、企業に属さずフリーランスで在宅ワークをするという勤務形態だった。

そんな我が子の姿を憂いた母から選挙ボランティアの活動を薦められ――というか、ほぼ強引に推し進められ、今に至る。

「……私が嫌になったなら、婚約の話はなかったことに」

「まさか。俺としては申し分ない。一流大学を卒業し、一流企業に就職、その後キャリアアップのために独立、マスコミに情報提供するなら、申し分ない経歴だ」

もしかしてこの人は、履歴書だけで自分を選んだのだろうか、奏は不安になって彼をじっと見つめる。

鷹凪は息をつき、ミネラルウォーターをひとくち含んで喉を潤すと、真面目な瞳になった。

「もとはと言えば、さっきの週刊誌の記者が脅してきたことが発端だ。俺の政治公約には、少子化対策、子育て問題や働く女性へのサポートなどが多く含まれているんだが、そもそも結婚もしていない、子どももいない俺に、正しい政策が作れるのか、と」

鷹凪はテーブルに肘をつき、目線をふと階下の夜景に向ける。
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