御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
必死の抵抗で叫んだ奏だったけれど。

「寂しいと思ったことはないか」

鷹凪の静かな問いかけに、ぴくりと震える。

「世間から逃げるようにして母親とふたり暮らし。友人も恋人もいない、そんな現状に不安を抱いたことはないのか?」

ドキリと胸のうちが震える。少なからず感じていたことではあったから。

「俺なら家族になってやれる。奏から一生寂しさを拭い去ってやれるぞ? それに、奏の母もきっと喜ぶ。さぞお前を心配しているだろうから」

その言葉は絶大だった。さすがは一流の演説家と言われるだけはある。どうすれば相手の心を揺さぶることができるのか、よくわかっている。

「どしゃぶりの中、自分のことはさておき高齢者に傘を譲る奏の優しさを見初めたんだ。それから、びしょ濡れで信号を守るバカ正直さも。お前のよさに気づき守ってやれるのは、この世界に俺しかいないかもしれないぞ?」

理由をひとつひとつ上げていく鷹凪の言葉には説得力があった。
例えそれが狡猾な目的だったとしても、聞いている者を納得させるだけの力が、彼の声には宿っている。

「俺を受け入れろ、奏。誰よりも幸せにしてやる」
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