御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
1 次期総理のゆゆしきスキャンダル
***
目的地の手前で、病院から出てきたおばあさんが空を見上げながら途方に暮れているのを見つけた。
きっと傘を持ってこなかったのだろう。天気予報では曇りと言っていたから。
けれど、突然振り出したその雨は、今や傘がなければ十メートル歩くだけでびしょ濡れになるレベルにまで達している。
「あの……」
意を決した奏は、おばあさんに傘を差しだした。
「よかったら、これ、どうぞ」
たとえこれから傘を買いに出たところで、コンビニまでの距離を考えると風邪を引いてしまいそうだ。
ましてや、高齢のおばあさんである。
「親切にありがとう。でも、あなたはどうするの?」
「大丈夫です。折り畳み傘がありますから」
笑顔で帰っていくおばあさんを病院の雨除けの下で見守りながら手を振った。
ちなみに、奏は嘘をついた。折り畳み傘なんて持っていない。
けれど……。
(おばあさんが風邪を引くよりはましよね)
そう自分に言い聞かせ、ぎゅっとバッグを胸もとに引き寄せると、どしゃぶりの雨に向けて走り出した。
目的地の手前で、病院から出てきたおばあさんが空を見上げながら途方に暮れているのを見つけた。
きっと傘を持ってこなかったのだろう。天気予報では曇りと言っていたから。
けれど、突然振り出したその雨は、今や傘がなければ十メートル歩くだけでびしょ濡れになるレベルにまで達している。
「あの……」
意を決した奏は、おばあさんに傘を差しだした。
「よかったら、これ、どうぞ」
たとえこれから傘を買いに出たところで、コンビニまでの距離を考えると風邪を引いてしまいそうだ。
ましてや、高齢のおばあさんである。
「親切にありがとう。でも、あなたはどうするの?」
「大丈夫です。折り畳み傘がありますから」
笑顔で帰っていくおばあさんを病院の雨除けの下で見守りながら手を振った。
ちなみに、奏は嘘をついた。折り畳み傘なんて持っていない。
けれど……。
(おばあさんが風邪を引くよりはましよね)
そう自分に言い聞かせ、ぎゅっとバッグを胸もとに引き寄せると、どしゃぶりの雨に向けて走り出した。