御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「つまり、俺が家に帰らない件に関していえば、不安はないというわけだな」

鷹凪の結論に、奏は黙り込む。しゅんとした顔色を見て、鷹凪はすぐさまその推論が間違っているのだと理解した。

「……まさか、俺がいなくて寂しいとか言うんじゃないだろうな」

奏は……沈黙。正直に肯定はできないし、違うと言えば嘘になる。

「……奏。お前が無口なのは知ってるが、YESかNOかくらい言え」

鷹凪が奏の手を持ち上げてきゅっと握りしめた。
驚いて顔を上げると、俺様なもの言いとは正反対の、誠実な眼差しが待ち受けていて、ドキリとしてしまった。

「なにを考えているのか、本音を言ってみろ。怒ったり離婚したりしないから、正直に」

彼の言葉にうっと押し黙る。
自分のことを愛しているのかいないのかすらよくわからないこの男に本心を打ち明けるのは怖い。縁を切られてしまいそうで。

「正直言って、俺とお前は他人同士、友人以下だ。胸中を察することができるほどお前の性格をよくしらないし、かといってどうでもいいとは思えない。だから全部言ってほしい。どんなバカなことでも、わがままでもいいから」

まっすぐな瞳が奏を覗き込んで、奏の心の中を探りにくる。
思わず目を逸らすと、彼の手のひらが奏の頬を包み込んだ。
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