御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
(思ったより、冷たい……)
全身に雨水が伝って、じわじわと体温が奪われていく。濡れた肌に吹き抜ける春の風が容赦なく奏の体を冷やしていく。
(でも、すぐそこまでだし)
横断歩道の向こう側に見える建物の一階部分、そこが奏の目的地だ。
昔美容院だったその場所には、今は『吉良選挙事務所』と書かれた看板が立っている。
看板の横には、先ほどテレビで見たばかりの、精悍な青年の顔写真。
先週から奏は、この選挙事務所でボランティアをさせてもらっている。
横断歩道を渡り選挙事務所に駆け込もうとした奏だったが、無情にも信号が赤に変わってしまった。
周囲に車の影はない。渡ってしまっても問題無さそうだが——
(……さすがに選挙事務所の目の前で信号無視をするのはダメよね)
仮に信号を無視して事務所に入る姿を見られたら、あの青年の悪評にも繋がりかねない。
仕方なく信号を待つことにする。近くに大きな交差点があるせいで、この信号はなかなか変わらないことで有名だ。
じっと体を小さくして、雨に耐えていると。
突然頭の上から大きな影が落ちてきた。
見上げた先に、大きな黒い傘。その傘の持ち主の顔を見て愕然とする。
全身に雨水が伝って、じわじわと体温が奪われていく。濡れた肌に吹き抜ける春の風が容赦なく奏の体を冷やしていく。
(でも、すぐそこまでだし)
横断歩道の向こう側に見える建物の一階部分、そこが奏の目的地だ。
昔美容院だったその場所には、今は『吉良選挙事務所』と書かれた看板が立っている。
看板の横には、先ほどテレビで見たばかりの、精悍な青年の顔写真。
先週から奏は、この選挙事務所でボランティアをさせてもらっている。
横断歩道を渡り選挙事務所に駆け込もうとした奏だったが、無情にも信号が赤に変わってしまった。
周囲に車の影はない。渡ってしまっても問題無さそうだが——
(……さすがに選挙事務所の目の前で信号無視をするのはダメよね)
仮に信号を無視して事務所に入る姿を見られたら、あの青年の悪評にも繋がりかねない。
仕方なく信号を待つことにする。近くに大きな交差点があるせいで、この信号はなかなか変わらないことで有名だ。
じっと体を小さくして、雨に耐えていると。
突然頭の上から大きな影が落ちてきた。
見上げた先に、大きな黒い傘。その傘の持ち主の顔を見て愕然とする。