御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
パチパチとチャンネルを変えていると、いっそう熱のこもった論説が聞こえてきた。

鷹凪が野党の追求に反論している。相手は鷹凪よりほんの少しだけ年上の男性で、鋭い視点と攻撃的なもの言いで最近話題になっている小田桐議員だ。

割とルックスがいい上に、いつも鷹凪に食ってかかるから、鷹凪と比較されライバル視されることが多いのだが――

(このひと、苦手だわ)

重箱の隅をつつくようにネチネチと揚げ足をとり、仰々しい演技で鷹凪を追い詰めようとするこの男が、奏は好きになれなかった。

(鷹凪さんも、少しイライラしてる……)

そう気づくことが出来たのは奏だけかもしれない。お茶の間の視聴者はいつも通りの鷹凪に見えているだろう。

ふたりの時間を積み重ねてきた奏は、微妙な声の変化や表情の緊張度合いに気づくようになり、彼の心の機微がわかってきた。

鷹凪は熱血ではあるものの、他人に声を荒げたり取り乱すことはなく、決して人前で見苦しい姿を見せない。
それでも、今は小田桐議員の執拗な追及に、少しだけ苛立っている。
< 53 / 147 >

この作品をシェア

pagetop