御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
『お前の笑い声が聞けて、ホッとした。メールも……毎日楽しみにしているんだ、奏ニュース』

奏の送るささやかな時事ネタにそんな渾名をつけて、彼は笑う。

『……今夜はちゃんと帰るから。待っていてくれ』

わずかに切ない声が響いてきて、奏の胸はきゅっと寂しさを増す。早く会いたい。

「……待ってます。何時でもいいから、帰ってきて……」

本当は、もっとたくさん会いたい。一時間でも、五分でもいいからそばにいてほしい。

ずっと押し殺してきた感情があふれだして、瞳に涙が滲む。

『……約束する』

それだけ告げて、電話は切れた。

苦しくなって、わっとソファに顔を埋めて涙を流した。

いつの間に自分はこんなにも夫のことを好きになっていたのだろう、そんなことを思って余計に切なさが増した。

愛のない結婚だったはずなのに、今では奏のなにもかもが鷹凪で染められている。

せめて彼と過ごせる時間を素敵なものにしようと、奏は涙を拭った。

おいしい夕飯を用意できるように準備をしなければ。
外を取材陣に囲まれている今、材料は宅配業者に注文しなければならない。忘れないように、桃も頼まなくては。

バタバタと慌ただしく準備を始めると、寂しさなんて吹き飛んで、あっという間に夜になった。
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