御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
悶々としながらも、お茶のひとつも出さないわけにはいかず、日本茶と簡単なお茶菓子を持って鷹凪の部屋に向かった。

篠田は夕飯を済ませたのだろうか、まだだというなら急ごしらえで一人分作らなければならない。
聞いてみようと思いドアをノックしかけたところで――

『執務室でも話せない話題とは、いったいなんなんです?』

篠田の詰問する声が部屋の中から聞こえてきて、思わず奏は手を止めた。
今邪魔をしてはまずいだろうか、そっと聞き耳を立ててタイミングを探る。

『官邸は気が抜けない。どこで盗聴されているかわかったもんじゃないからな』

『聞かれてはまずいことがあるとでも?』

『……少々目をつけられているみたいでな。慎重になるに越したことはない』

『……これだけ目立てば、目をつけられるどころか、あなたを潰しにかかる輩はわんさか現れますよ』

『まだ潰されるわけにはいかない。目的を達していないからな』

どうやら深刻な話題らしい。この先もしばらく奏の入る隙はなさそうだ。仕方なくお茶を持ったまま回れ右をする。

しばらくリビングで待っていると、篠田だけがやってきた。
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