御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「せっかくのふたりの時間に、お邪魔しました」

「篠田さん、夕飯は――」

「いえ、私は結構です。吉良先生にちゃんとしたものを食べさせてあげてください。ここ最近忙しくて、栄養補助食品ばかり召し上がっているので」

軽く一礼したあと、篠田はそそくさと玄関を出て行ってしまった。

残された奏が鷹凪の部屋へ向かうと、半開きのドアの隙間から書類を眺める彼の姿が見えた。
テレビ越しでも気になってはいたのだが、少しだけやつれた気がする。

声をかけようか悩んでいた奏だったが、その前に鷹凪の方が先に気づいた。

「……奏?」

顔を上げてひとつ首を傾げると、ドアのところまでやってくる。

「そんなところで、どうしたんだ?」

どうしたもこうしたもない。久々の夫婦の再開だというのに。

切なくて、会いたくて、心配して、こっちはさんざん苦しんだっていうのに。

平然とする彼を見るとイライラする。
わかってる、この感情は不条理なものだ。単なる子どもわがままと同じ。鷹凪に当たってはいけない。
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