御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
(ど、どうしよう……緊張する……)

彼の事務所で手伝わせてもらっているとはいえ、奏にとってこの吉良鷹凪という人物は別世界の人間だ。

人見知りも相まって、正直、口を利くのも躊躇われてしまう。今までだって、ろくに会話をしたことがない。

ましてや、たくさんのボランティアがいる中で、滅多に口を開かず借りてきた猫のようにおとなしくしている奏を、彼が認識しているとは思えなかった。

けれど、彼は自らの肩の下にある奏の顔を覗き込み

「すぐそこだけど、送っていくよ。今日も手伝いにきてくれたんだろう」

どうやら奏のことを知ってくれていたみたいだ。
奏はどぎまぎとしながら「ありがとうございます」とうつむいた。

(……近くでみると、すごく格好いい……)

遠くから眺める後ろ姿と違って、すぐ左上にある横顔は、とても整っていて秀麗だ。

まともに見つめられない奏とは反対に、隣の吉良鷹凪は興味津々に奏を見つめた。

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