御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「夕飯は、食べますか」

必死に自分を抑えてぶっきっらぼうに問いかけてみると、不意に肩を掴まれた。

「奏。怒っているのか?」

「……そんなことは」

「なら俺を見て言え」

無理やり前を向かせられて、真正面から問いただされた。
隠し切れない複雑な感情に、思わず目を逸らしてしまう。

「……奏。遅くなって悪かった。謝るから機嫌直せ」

「……忙しいのは知ってますから。そんなことで怒りません」

「じゃあなんでそんな顔してるんだ」

奏の瞳はもう我慢の限界で、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。

ずっと会いたかった彼が目の前にいる。けれど、素直にその胸に飛び込むこともできない。
当の彼は仕事のことばかり考えていて、全然寂しそうじゃない。

「……鷹凪さんはっ……私なんていなくても平気なんでしょうけどっ……」

思わず飛び出した子どもみたいな言い訳に、奏は自分でもびっくりしてしまった。

いつも自分を押し殺して我慢し続けてきた奏が、生まれて初めて爆発させた感情だった。
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