御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
4 可愛いだけの奥様じゃ……
翌朝の記者の質問は今までで一番酷かった。

『総理、昨晩は久しぶりにご自宅へ帰られたようですが、奥様との夜はいかがでしたか?』

『ええ。もちろん、最高でしたよ』

にっこりと笑って答える鷹凪に、質問した記者はもちろん、テレビの前の奏ですら赤面していた。

ふたりベッドの上で抱きしめ合ったあの時間を思い出すだけで、今でも奏はドキドキとしてしまう。

鷹凪が家を出たあと、奏は今日も外に出ることが出来ず、ソファの上で過ごすことになってしまった。
フリーランスの在宅勤務は、結婚後は少しだけペースをセーブしていて、仕事と家事をやっても時間に余りあるくらいだ。

このままではいけない、鷹凪の妻として相応しいことを、彼のためになることを始めなくては。
そう焦りは募るのだが、実際には行動を制限されている上になにをしたらいいのかもわからない。

テレビでは今日も小田桐議員が打倒鷹凪とも言わんばかりの持論を繰り広げていて、ニュースのコメンテーターはそれを面白おかしく取り上げている。

(やっぱり好きになれないわ)

そう感じてチャンネルを変えようとリモコンを手にしたところで。

『この小田桐議員の奥様――彼の秘書でもあるのですが、以前吉良総理との熱愛の噂が報じられていましたよね』

『そういった経緯もあって、このふたりの関係は犬猿の仲というわけです』

『政治だけでなく、個人的な反感もありそうですね』

『痴情のもつれがふたりの激しい討論に拍車をかけているのでしょうか』

コメンテーターとアナウンサーが、ケラケラと笑いながら意見を交わしている。

思わず奏はリモコンを持つ手を膝の上にことりと落とした。
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