御曹司と契約結婚～俺様プレジデントの溺愛に逆らえません～

（私とは、全然違うな……）

落ち込みそうになって、慌てて考えを振り払った。
そんなことを考えても仕方がない。奏が今できることは、家の中を綺麗にして、おいしいご飯を作って、彼の帰りを待つこと。そして、彼が楽しみにしていると言ってくれたメールを打つこと。

けれど――。

（メール、なにも思いつかない……）

余計な不安感に苛まれて動揺してしまったみたいだ。頭の中で考えがまとまらない。

（なに本気にしてるの？　たかだがワイドショーのネタなのに）

悔しくなって、きゅっと携帯端末を握りしめていると。

――ピンポーン

突然インターフォンがなって、奏はハッと顔を上げた。
宅配業者だろうか。でも、今日はまだ頼んでいないのに。

篠田に『警戒しろ』と言われていたのを思い出し、きゅっと身を引き締める。

恐る恐るマンションの入り口を映すモニターを覗いてみると、そこにはスーツ姿のピシッとした男性が立っていて、少なくとも記者やいたずらの類ではなさそうに見えた。

それにしても、どこかで見たことのある男だ。誰だったろう。