御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
理性と戦っているのは、自分の方かもしれない。
まるで自らに言い聞かせるように、奏は絶え絶えに繰り返した。

「私より……もっと……大事な……」

「お前より大事なことなんてない」

「ダメです……」

彼への想いに狂いながら、奏は上辺だけの戒めを吐いた。

仕事に行かないでほしいなんて、一番言っちゃいけない言葉だ。なのに心の奥底では激しくそれを願っている。

そんな誘惑に弱い自分だから総理夫人に相応しくない、そう小田桐に指摘されてしまったのかもしれない。

――鷹凪のために身を削ってでもなにかしたいと思うなら――

もちろん、自分になにかできるなら、いくらでもしたい。
とはいえ、ファーストレディなんて職務が務まるとも思えなくて。

理性と本能が行き交う狭間で、彼との愛に埋もれながら、ぼんやりと心を揺らすのだった。



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