御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「奏」

テーブルに食事を用意し終えて、鷹凪の正面に腰掛けようとした奏だったが、目の前の彼が真面目な顔をしたのを見てハッと動きを止めた。

「お前はよくやってくれている」

ドキリとした。どうして突然、そんなことを真顔で言うのだろう。

「……どうかしましたか?」

「いや、なんとなく。言いたくなって」

鷹凪はいただきますと手を合わせて箸を手に取る。

その間、奏はドキドキとして落ち着かなかった。鷹凪がまるで心の内を見透かすように釘を刺してきたから。

奏はずっと考えていた。自分なんかに、鷹凪のためにできることがあるのかどうか。
答えがでないまま、気がつけば数か月が経過していた。

日増しに罪悪感だけが膨れ上がり、とうとう今日、奏は母親に相談した。
自分は鷹凪に与えられたことだけをやっていればいいのか、それとも、自ら彼に歩み寄る必要があるのか。

母親は「やりたいようにやりなさい」と言った。
奏がどんな結論を出したとしても、その考え方も性格も、全部含めて結婚したのだから、そのすべてがあなたなのよ、と。

「奏の食事はうまい。栄養もちゃんと考えてくれてる」

鷹凪はそう笑って言ってくれたけれど。

やっぱり奏は、今のままではいけないと思うのだ。

彼とともに歩むためには、もっと自分に出来ることがあるはずだと。
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