御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
翌朝。鷹凪が出かけたのを見計らって、奏は以前、小田桐からもらった名刺に電話をかけた。

『おお、久しぶり、俺のこと、覚えていてくれたんだな』

小田桐は大袈裟に驚いたあと、わずかに声を低くして奏に問いかけた。

『電話をくれたってことは、決意が固まったってことかな?』

奏は迷いなく「はい」と答えた。この数か月、さんざん悩んで決めたことなのだ。これ以上悩むことなんてない。

その日の午後、小田桐がひとりの女性を連れて家にやってきた。

ネイビーの花柄のワンピースに白いカーディガンを羽織ったその女性は、すらっと背が高くきちんとしていて、清楚な印象の美女だった。

「紹介する。俺の妻の美影だ」

「はじめまして」

どこから見ても申し分ないしなやかな動きで一礼する。うっとりと見惚れてしまいそうな所作だった。

「男の俺が相談に乗るよりも、彼女の方が的確だと思って」

「私で力になれることがあれば、なんでもおっしゃってください」

雰囲気以上にきびきびと話す彼女は、薄い唇をキリっと跳ね上げて答えた。なるほど、秘書という感じがする。
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