御曹司と契約結婚～俺様プレジデントの溺愛に逆らえません～

「お引き取り願います！」

「総理！　なにかひと言！」

「いい加減にしろ！」

鷹凪が記者の体を勢いよく壁に叩きつける。

ハッと驚いて奏は肩を震わせた。

「だ、だめ、鷹凪さん……っ！」

そんなことをしては、マスコミに悪評を立てられてしまう。
けれど鷹凪は怯むことなく、記者の胸ぐらを掴み上げて、聞いたこともないようなドスの利いた声で警告した。

「これ以上、妻にちょっかいをかけるな。いきすぎた取材だと訴えることも出来るんだぞ。二度と記事をかけないようにされたいか」

びくりと記者は震えあがり、慌てて逃げていく。
非常階段に飛び込んでいった姿を確認して、鷹凪がすかさず玄関の扉を閉め、施錠した。

「た、鷹凪さ――」

今頃押し寄せてきた恐怖にじわりと瞳が滲む。

「大丈夫だったか、奏」

そんな奏を鷹凪はぎゅっと抱きしめた。

「……はい！」

「もう大丈夫だ」

鷹凪の大きくて力強い腕に包み込まれ、ほっとする――も、束の間、鷹凪は奏の両肩を掴み、深刻な様相で引き離した。

「少々まずいことになって、急いで帰ってきたんだ」

「え？」

「こっちに来てくれ」