副社長の一目惚れフィアンセ
翌週末、大衆居酒屋はとても賑わっていた。

「カンパーイ!おめでとう!」

グラスを持ち上げて、男性陣の声が賑やかな居酒屋内に負けじと響き渡る。

集まったのは、ナオの大学時代の仲間5人、そしてナオと私だ。

ナオの婚約祝いを兼ねての飲み会に『婚約者さんもぜひ』と呼んでくれたのだ。

ひとりずつ自己紹介されたけどすぐに覚えられるわけもなく、愛想笑いをして頭を下げた。

「よかったなあ。政略結婚にならなくて」

「まあな。ギリギリセーフ」

「ギリギリどころじゃねえぞ?3日前ってありえないからな」

アハハっと笑いが飛ぶ。

「最後まで希望を捨てちゃいかんって名言が漫画であっただろ?」

「あーあったあった。でも状況が全然違うからな?」

笑いが飛び交う。

友達と話すときのナオは、私といるときとも少ししゃべり方が違ってドキドキしてしまう。

まだナオが何の地位もない、普通の学生だった時代の友人たちだからこそ、心を許して素を出せるんだろうな。

「明里ちゃんもいっぱい飲んでね。今日は2人の婚約祝いなんだからさ」

「はい。いただきます」

と言ってもあまりお酒が得意でない私は、少しずつ口をつける。

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