副社長の一目惚れフィアンセ
飲み会から数日が経ち、久しぶりに遅くまで残業をした帰り。

マンションへは電車で3駅の距離だからずいぶん助かっている。

満員電車に揺られなくて済む分、以前のアパートの時とは疲れの差が大違いだ。


玄関を開けてホッと一息ついたとき、見計らったかのようにきた着信に急激に疲れが増す。

ずいぶん久しぶりに画面に表示された『お母さん』の文字。

電話に出なければ、しつこく何度でもかけてくるだろう。

仕方なくボタンをスワイプした。

『もしもし?お盆のことだけど、もちろん帰って来るでしょ?』

開口一番お母さんは声を弾ませた。

元気?なんていう決まり文句すら今日はないのか。

「帰るつもりでいるけど、まだ予定が読めないよ」

『詩織が待ってるのよ?よくそんな言い方ができるわね』

「…だって婚約者がいる身なんだよ?そっちが優先になるのは仕方ないでしょ」

お母さんは、まあそうねえと言いながらも、納得がいかないように少し拗ねた口調になる。


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