副社長の一目惚れフィアンセ
「とりあえず今日はこのままここに泊まれよ、明里」

「え?」

「今の明里をほっとけない。あてもないから電話をくれたんだろ?」

「ちょっと待って!」

紗耶の厳しい口調が会話を阻む。

「この場合どう考えても私の部屋でしょ?隣に住んでるんだし!」

「紗耶は夜勤だろうが!」

「だから明里は私のベッドでゆっくり休めるじゃない!」

「お前、今の明里をひとりで寝かせるっていうのか!?」

「はあ?あんたシングルベッドに明里と2人で寝る気なの?一応あんたも男だよ?」

「一応じゃなくてバリバリ男だ!」

「だから心配だって言ってるんじゃない!」

終わりの見えない2人の言い合いをしばらく聞きながら、笑える自分にホッとした。

これから先のことなんてわからないけど、少なくとも私の味方をしてくれる人はちゃんといる。


とりあえず、普通の会社員はまだお盆休み中だ。

私も明後日までは休みということになっている。

紗耶の部屋に一晩泊めてもらって、次の日はゆっくり今後のことを考えることにした。

私自身まだまだ混乱している。

いくら話したくなくても、ナオとは一度話をしないと何も前に進めない。

ナオはきっと仕事だろうから、明日の夜ナオが帰って来るまでに気持ちを落ち着かせよう。

そう思っていた。




だけど、ナオへきていた電話がとても深刻だったことを、翌朝思い知らされることになった。







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