副社長の一目惚れフィアンセ
数日後、明確な原因も究明され、対応策も発表されて、とりあえずニュースで取り上げられることはなくなった。

だけど相変わらずナオは部屋には帰って来ない。

自分の会社のことなのに、情報が逐一入ってくるわけじゃない。

むしろネットで検索して初めて知るようなことがあるくらいだ。

だからこそ余計に心配は募っていく。

返金対応はしばらく続くだろうし、会社のイメージダウンだって簡単には消えないだろう。

私は今回の件に関わることには何もできない。
ただただ自分の無力さを痛感させられる。


「明里さん」

穏やかな女性の声に振り返ったら、そこには背が高くスタイルのいい女性が立っていた。

私を含め、事務職は通常制服を着ているけど、彼女はスーツ姿。

上品な顔立ちの彼女に見覚えはない。私と全く面識のない人だと思う。

「私は副社長の第2秘書をしております、夏川(なつかわ)と申します。
挨拶遅れまして大変申し訳ありません」

「い、いえ…」

謝られるほどのことじゃないのに、と思いながらも、こんなに綺麗な人が第2秘書をしていたことに驚いた。

と同時に少しだけ嫌な気持ちになる。

あれだけ傷ついたのに、この期に及んでバカバカしいと思う。

だけど、その嫌な気持ちの正体が『嫉妬』であることはすぐにわかってしまった。

ナオはこんなに綺麗な人と日々仕事をしているのだ、と。


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