副社長の一目惚れフィアンセ
真っ白なベッドに点滴スタンドが見えて、ベッドに横たわっているのはずいぶん顔色の悪いナオだった。

心なしか頬のあたりが痩せたようにも見える。

「…ナオ…?」

無意識に声が漏れたけど、それがナオに届くことはなかった。

お盆からずっと働いていたのなら倒れたって当然だ。


『どうしても早く明里さんと話さなければならないことがあるんだとおっしゃっていました。
そのために、必死に仕事をしています』


私のせいで…尚更無理をしていたのかもしれない。

ナオの冷たい手に触れ、そっと握った。

「…明里…?」

ハッとしてナオの顔を見たら、ナオは寝起きの虚ろな目で私のほうを見ていた。

「…やっと会えた…」

泣きそうに掠れる声。やっとの思いで作っている笑顔。

それを見るだけで涙が滲む。

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