副社長の一目惚れフィアンセ

「なんで私。忘れてたんだろう…
私、高校生のナオに…お姉ちゃんと一緒にいるナオに、確かに会ってた」

ナオは宙を見上げて遠い目をした。

血色の悪い唇がゆっくりと動く。

「あの日…葬儀の日、ぼんやり立ち尽くしていた俺の元へ、明里が大泣きしながら駆けてきたんだ」


"ごめんなさい！私がナオをお姉ちゃんから『りゃくだつ』するなんて言ったから、神様がお姉ちゃんを連れてっちゃったの。
お姉ちゃんは悪くないのに、ナオと幸せになるはずだったのに…
私がお姉ちゃんの代わりに死ねばよかった…っ"


「代わりに自分が死ねばよかったなんて、まだ９歳の女の子がそんなことを口にして、俺に謝るんだ。
そんな姿を見たら、詩織のあとを追って死のうなんて思った自分がバカだと思った。
明里は俺よりずっと苦しんでるのに…だから魔法をかけた」

「魔法…？」